は、もうほとんど死にそうなくらいに疲れていたけれども、私たち他の者と同様にオールを取らされ、舟は間もなく穏かな海の上をずんずんと飛ぶように進んだ。間もなく私たちは海峡を通り抜けて、島の南東の角を狙った。そこは四日前にヒスパニオーラ号を曳綱で曳いて入った処である。
二つ峯の山のそばを通り過ぎる時に、ベン・ガンの洞穴の黒い入口と、そのそばに銃に凭《もた》れて立っている人の姿とが見えた。それは大地主さんだった。私たちはハンケチを打ち振って万歳を三唱したが、シルヴァーの声もだれにも劣らないほど熱誠にそれに加わった。
さらに三マイル進み、ちょうど北浦の口を入ったところで、私たちの出会ったのは他《ほか》ならぬ、ひとりで動いているヒスパニオーラ号だった。この前の満潮で浮き上ったのだ。そしてもし南の碇泊所のようにひどい風があったり強い潮流があったりしたならば、船はもう二度と見られないところへ流れて行ってしまったか、あるいはどこかへ坐礁してどうにも出来なくなってしまっていたろう。しかし実際は、大檣帆《メーンスル》が破損した以外には、悪くなったところはほとんどなかった。それで、別の錨をつけて、それを一尋半の水の中へ落した。私たち一同は、ベン・ガンの宝蔵《たからぐら》に一番近い地点であるラム入江へと、再び漕いで※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]った。それからグレーが一人だけで快艇を漕いでヒスパエオーラ号へ戻り、そこで番をしてその夜を過すことにした。
浜から洞穴の入口までは緩い傾斜をなして上っていた。その頂上で、大地主さんが私たちを出迎えた。私には彼は懇ろに親切にしてくれて、私の脱走したことについては、叱るにも褒めるにも一|言《こと》も言わなかった。シルヴァーが丁寧なお辞儀をすると、少しむっと赤い顔をした。
「ジョン・シルヴァー、」と彼は言った。「お前は非常な悪党で詐欺師だ、――実に驚くべき詐欺師だよ。私はお前を告訴するなと言われている。だから、しないつもりだ。しかし死んだ人たちが磨石《ひきうす》のようにお前の頸《くび》にぶら下っているのだぞ(註八三)。」
「どうも有難うごぜえます、はい。」とのっぽのジョンは、またお辞儀をしながら、答えた。
「私に有難うなんてよくも言えたもんだ!」と大地主さんが叫んだ。「私としては自分の義務を非常に怠ることになるんだ。退《の》いていろ。」
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