!」
「じゃあこうしてくれるぞ!」とモーガンは罵り言葉と共に言った。
そして彼は、二十歳の若者のような勢でナイフを抜いて、跳び立った。
「止《や》めろ!」とシルヴァーが叫んだ。「お前は何だ、トム・モーガン? 多分お前は船長のつもりだったんだろう、大方な。馬鹿めが。だが己がよく教えてやろう! 己に逆《さから》えば、お前はこの三十年|前《めえ》からたくさんの奴がお前の前に遭ったような目に遭うんだぞ。――帆桁の端にぶら下げられた奴もいやがるんだ、畜生! それから船の外へ抛《ほう》り出された奴もいる。みんな魚の餌食になったものさ。己に面と向って反対《はんてえ》した奴で、その後でいい目に遭った奴は、一人だっていねえんだぜ、トム・モーガン。そいつぁ間違えっこなしだぞ。」
モーガンはじっとしてしまった。しかし他の連中からぶつぶつ嗄《しゃが》れ声の不平が起った。
「トムの方に道理があるよ。」と一人が言った。
「己はずいぶん永《なげ》え間一人にいじめられるのを我慢して来たんだ。この上またお前《めえ》にいじめられてたまるもんか、ジョン・シルヴァー。」と別の者が言い足した。
「手前《てめえ》ら紳士たちの中でだれかこの己[#「この己」に傍点]と議論か喧嘩《けんか》できまりをつけてえって奴がいるのか?」とシルヴァーは、まだ火のついているパイプを右手に持ったまま、樽の上の坐り場所からぐっと前へ身を屈めながら、奴鳴った。「どうしようってのか言ってみろ。手前らあ唖《おし》じゃあるめえ。してえ奴にゃさせてやる。己も永え年月《としつき》過して来て、今になって大馬鹿野郎めに己の面先《つらさき》で生意気な真似をさせておくと思うか? 手前たちだってやり方は心得てるんだ。みんな自分じゃ分限紳士のつもりなんだからな。さあ、いつだって向って来い。やれる奴は彎刀《カトラス》を手に取れ。そうすりゃ、己は、※[#「木+裃のつくり」、第3水準1−85−66]杖《かせづえ》をついちゃいるが、このパイプが空《から》にならねえうちに、其奴《そやつ》の臓腑がどんな色をしているか見てやろう。」
だれも動かなかった。だれも答えなかった。
「それがお前たちのやり方だ、そうだろ?」と彼はパイプを口へ戻しながら言い足した。「そうさ、お前たちゃどのみち見掛ばかりの奴らだ。相手にするほどの値打もねえ、手前らはな。多分手前たちだって自分の
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