れから、今はもう海の底にいるハンズとが話しているのを聞いて、一時間とたたないうちに君たちの言ったことを一語も残さずみんな知らせたんだ。それから、スクーナー船はと言うと、あれの錨索を切ったのも僕なら、君たちがあの船に乗せておいた人たちを殺したのも僕、あの船を君たちの中の一人だって二度ともう見られない処へ隠したのも僕だよ。勝って笑えるのは僕の方なんだ。僕はこの事件では初手《しょて》から上手《うわて》に出ているんだ。僕はもう君たちが蝿ほども怖《こわ》かあない。さあ、僕を殺すとも生かすとも、好きなようにしてくれ給え。だが一つのことだけ言っておこう。もうこれっきりだ。もし君たちが僕の命を助けてくれるなら、すんだことはすんだことにして、君らが海賊をしたために裁判にかけられる時にゃ、僕は出来るだけのことをして君たちを救ってあげよう。どちらかきめるのは君たちの方だ。他人《ひと》を殺して君たち自身に何にもならぬことをするか、それとも、僕を生かしておいて、君たちが絞首《しめくび》になるのを助かる証人を残しておくかだ。」
 私はここで言葉を止めた。というのは、実際、私は息が切れたし、それに、驚いたことには、そこにいる者が一人も身動きもしないで、みんなが羊のようにただ私を見つめて坐っていたからである。そして彼等がまだじっと見つめている間に、私は再び口を切った。――
「それからね、シルヴァーさん、あんたはここにいる中で一番偉い人だと思うが、もし僕が殺されるようなことになったなら、あんたはどうか先生に僕の死に方を知らせてあげて下さい。」
「心に留めておこう。」とシルヴァーは言ったが、非常に奇妙な口調だったので、彼が私の頼みを嘲笑《あざわら》っているのか、それとも私の勇気に感心していたのか、私にはどうしてもいずれとも判断しかねた。
「まだ一つ言い添えることがある。」と例のマホガニー色の顔をした年寄の船乗――モーガンという名の――私がブリストルの埠頭にあったのっぽのジョンの居酒屋で見たことのあるあの男――が叫んだ。「黒犬《ブラック・ドッグ》を知ってたのもこいつだったぞ。」
「そうさ、それからな、」と船の料理番《コック》は言い足した。「もう一つ言い添えることもあるぜ、畜生! ビリー・ボーンズから海図をかっぱらったのもやっぱりこの子供だったよ。たびたび己たちはこのジム・ホーキンズのためにしくじったんだ
前へ 次へ
全206ページ中157ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 直次郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング