もっともです!」と召使頭が叫んだ。
「ところで第二の問題だが、」とアッタスンが言葉を続けた。「誰がそれをすることにするかね?」
「なあに、旦那さまと私で、」という臆しない返答だった。
「よく言ってくれた、」と弁護士が答えた。「で、どんなことになろうと、きっとおまえに迷惑はかけないようにしてやろう。」
「階段講堂に斧が一梃ございます、」とプールは続けて言った。「それから旦那さまは台所の火掻きを御自分でお持ち下さいまし。」
 弁護士はその不細工な、しかし重い道具を手に取って、振り動かしてみた。「おまえはね、プール、」と彼は顔を上げて言った。「おまえと僕とは多少危険なところへ入ろうとしているのだということを知っているかね?」
「さようでございますとも、旦那さま、」と召使頭が答えた。
「ではな、我々は包み隠しをしない方がよい、」と相手が言った。「我々は二人とも心に思っていることをみんなまだ口に出して言っていないのだ。すっかりうち明けて話すとしようじゃないか。そのおまえの見たという覆面をした男だが、おまえはその男に見覚えがあったかね?」
「さようでございますね、何しろそれは大へん素速く逃げて行きましたし、そいつはひどく体を折り曲げておりましたので、そのことははっきり申し上げることはできません、」という返事であった。「けれども、それはハイドさんではなかったか? と旦那さまがおっしゃるおつもりなら、――そうですね、さよう、そうだったと私は思いますんで! 体の大きさも大体同じくらいですし、素ばしこくて身軽な様子も同じでしてねえ。それに、ほかの誰が実験室の戸口から中へ入ることができましょう? あの人殺しの時にもあの人はやっぱり鍵を持っていたということは、旦那さまもお忘れではございませんでしょう? でもそれだけじゃありません。アッタスンさま、あなたさまがいつかあのハイドさんにお会いになったことがおありかどうか私は存じませんが?」
「うん、僕は一度あの男と話したことがある、」と弁護士が言った。
「それなら、あなたさまも私どもみんなと同じように、あのお方には何となく変なところが――何となく人をぎょっとさせるところが――あったということをご存じに違いありません。それを何と言ったらいいか、こう言うよりほかには、私にはよくわからないのですが、――骨の髄までも何だかぞっとするようなところですね。」
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