に列を組んで行くときであった。その教会は、私たちの学校の校長が牧師なのであった。この校長が厳かな、ゆっくりした足どりで説教壇へ上がってゆくのを、私はいつも、廻廊《かいろう》にある遠く離れた私たちの座席から、どんなに深い驚きといぶかしさで眺《なが》めたことであろう! あんなにしかつめらしく温和な顔をして、あんなにつやつやした、あんなに僧侶《そうりょ》らしくひらひらした衣服を着て、あんなに念入りに髪粉をつけた、あんなにいかめしい、あんなに大きな仮髪《かつら》をつけたこの尊い人が、――この人が、ついさっきまで、苦虫をかみつぶしたような顔つきで、嗅煙草《かぎたばこ》でよごれた着物を着て、木箆《きべら》(5)を手にしながら学校の峻厳《しゅんげん》な法則を執行していた人なのであろうか? おお、あまりに奇怪でどうしてもわからない大きな不思議!
 その重々しい塀の一つの角に、もっと重々しい一つの門が厳然として立っていた。それは鉄の螺釘《ねじくぎ》を方々に打ちつけて、上にはぎざぎざの鉄の忍返《しのびがえ》しを打ってあった。なんという深い畏怖《いふ》の感じを、それは起させたことであろう!
 その門は、さき
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