栄《はえ》ある、金色の旗、
そが甍《いらか》の上に躍りひるがえれり。
(こは――すべてこは――遠き
昔のことなりき)
戯《たわむ》れそよぐ軟風《なよかぜ》に
いともよきその日、
羽毛かざれる蒼白き塁《とりで》にそいて
翼ある香《かおり》、通り去りぬ。
三
この幸《さち》ある渓谷《たに》をさまよいし人々は、
輝く二つの窓より見たり、
調べととのえる琵琶《びわ》の音《ね》につれ
王座をめぐりて、精霊らの舞えるを。
その王座には
(紫の御子《ポーフィロジーニ》!)
その光栄《ほまれ》にふさわしき威厳もて
この領土《くに》の主《あるじ》坐《ざ》せり。
四
またすべて真珠と紅玉とをもて
美わしき宮殿の扉《とびら》は燦《きらめ》けり。
その扉より流れ、流れ、流れて
永遠《とわ》に閃《ひらめ》きつつ「こだま」の一群《ひとむれ》来たりぬ
そがたのしき務《つとめ》はただ
いとも妙《たえ》なる声をもて
歌いたたえるのみなりき、
そが王の才と智《ち》を。
五
されど魔もの、悲愁《かなしみ》の衣《ころも》きて
この王の高き領土《くに》を
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