きない。彼の不思議な幻想曲の歌詞はもとより、その曲調も(というのは彼はちょいちょい韻を踏んだ即興詩を自分で伴奏したから)、前に述べたような最高の人為的興奮の特別の瞬間にだけ見られる強烈な精神の集中の結果であるべきだったし、また事実そうであったのだ。このような狂想曲の一つの歌詞を私はたやすく覚えてしまった。彼がそれを聞かしてくれたときそんなに強い印象を受けたのは、おそらく、その詩の意味の底の神秘的な流れのなかに、アッシャー自身が彼の高い理性がその王座の上でぐらついていることを十分に意識しているということを、私が初めて知ったように思ったからであろう。『魔の宮殿』という題のその詩は、正確ではないとしても、だいたい次のようなものであった。――

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      一

善き天使らの住まえる、
 緑いと濃きわれらが渓谷《たに》に、
かつて美《うる》わしく宏《おお》いなる宮殿《みやい》――
 輝ける宮殿――そびえ立てり。
王なる「思想」の領域に
 そは立てり!
最高天使《セラフ》も未《いま》だかくも美わしき宮の上に
 そが翼をひろげたることなかりき。

      二

黄なる、
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