と変な事を聞くようですがね、お国の方では迷信がひどくはありませんか。お怪談《ばけばなし》なんぞが……前に僕は誰れかに聞いたっけ、そんな話は寒い国ほど盛んだって。」私もつい話にうかされて来る。
「盛んです。そんな話ばかりですよ。」 私が菓子を一つ摘《つま》んで食べると、荻原も心置きなく手を出して、一つ摘んだ。だんだん熱して来て、目に見えるほど、様子が変わった。
「やっぱり、陰鬱なせいかしら。」
「どうですか。国ではまだ巫女《みこ》だとか、変んな魔法を使うと言う女などがたくさんいましてね。」荻原は一直線に話を進めようとする。
「魔法?……何です、それは。」
「何ですかね、蛇だとか、いろいろな毒虫を見ると、何か呪文《おまじない》のような事を言って、すぐそれを殺してしまうのです。私の祖母《おばあ》さんもやりますよ。」
「不思議ですね、それをするのは女だけですか?」
「ええ女だけです。それも、その家の系統があるのです。」
「若い女でもやるんですか?」
「やっぱり老人《としより》の方です。」
荻原は初めのおどおどしていた風がすっかり消えてしまった。ひとりで興に乗って来て話しつづける。その顔を見る
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