い心持《こころもち》になった』と言った夢を見た。
○
足、その地を踏んだでもなく。画《え》でその地の景色を見たでも何でも無いのに、始終、夢に或《ある》地の景色を見る。一日《いちじつ》、不図《ふと》或る道へ出た。するとその道は夢に、その或る景色を見に行く道に寸分|違《たが》わぬ。あまりの不思議さにその道を辿って行《いっ》たら、果然、夢に見馴れた景色のその土地に到着した。これは自分の友人が親しく実見《じっけん》した奇話である。
弘治《こうじ》二年に戦没した先祖の墓は幾百年の星霜《せいそう》を経《へ》て、その所在地は知られなかった。すると或る晩に、その墓は五輪の塔で、こういう木の下に埋《うず》まっていると夢に見たので、その翌日|檀那寺《だんなでら》へ行って、夢に見た通り探《さ》がすと果《はた》して見付《めっか》った。これも友人が最近に見た正夢《まさゆめ》である。
○
十時頃にならねば眼が醒めぬという朝寝坊の友人が実見《じっけん》した事柄である。眼の醒める時分に眼を醒ますと、いつでも床《とこ》の間《ま》に若い女の顔が見える。しばらくして始めて消える。しかもその
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