とがありそうだと察して、それに備えておくということもありそうなことではなかろうか? 紐が私の胸の振子の通るところに巻いてあるということがありそうだろうか? このかすかな、そして最後と思われる希望が破られるのを恐れながらも、私は胸のところをはっきり見られるくらいにまで頭を上げてみた。革紐は手足も胴も縦横にぐるぐると堅く巻いてあった、――ただ人をうち殺すその偃月刀の通り路だけはのけて[#「ただ人をうち殺すその偃月刀の通り路だけはのけて」に傍点]。
頭をもとの位置に下ろすとすぐ、前にちょっと言ったところの、そしてその半分が、燃えるような唇に食物を持って行ったときにぼんやり浮んだところの、あの救いという考えのまだ形をなさない半分、というより以上にうまく言いあらわせないものが、私の心にひらめいた。全体の考えがいまあらわれてきたのだ。――弱い、あまり正気でもない、あまりはっきりしないものであったが、――それでもとにかく全体であった。私はすぐに自暴自棄の勇気で、その考えの実行にとりかかった。
もう幾時間も、私の臥ている低い枠組のすぐ近くには、鼠が文字どおり群がっていた。彼らは荒々しく、大胆で、が
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