鸚鵡小町
折口信夫

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)玉簾《タマダレ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)御|和《コタ》へ

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)うちぞ[#「ぞ」に白丸傍点]

 [#(…)]:訓点送り仮名
 (例)小野[#(ノ)]小町
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謡曲小町物の一で、卒都婆小町などゝ共に、小町の末路を伝へたものである。小野[#(ノ)]小町御所を出て、年たけて、関寺辺の柴の庵に、住んでゐた。陽成院小町の容子を聞こしめされて、新大納言行家に、
[#ここから2字下げ]
雲の上は、ありし昔にかはらねど、見し玉簾《タマダレ》の うちやゆかしき
[#ここで字下げ終わり]
といふ御製を預けて、其有様を見がてら、返歌を聞いて来るやうに命ぜられた。関寺に行くと、物狂ひの老女が来るのを小町かと聞くと、小町は小町だが、お公家様として、妾の事を問はれるのは、何事の用だと言ふ。歌を詠むかと問ふと、かう言ふ身の上になつて、唯生きてゐると言ふばかりだと答へる。天子もお前をおいとほしがられて、御製を下されたと言ふと、其を読み聞かせてく
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