まいかと思ふ。
三
さて此類の柱又は旗竿には、必其尖に神の依代とすべき或物品を附けたものである。木津のだいがく[#「だいがく」に傍線]なども、自分等が覚えてから、町によつては三日月・鎗・薙刀・神楽鈴・三本鎗・千成瓢箪など色々立てる様になつたが、依代の本体はやはり天幕に掩はれた髯籠であつた。此は、其頃あつた若中《ワカナカ》(今は勿体らしく青年会)のだいがく[#「だいがく」に傍線]、並びに西成郡|勝間《コツマ》村・粉浜《コハマ》村・中河内の住道《スンヂ》村などで以前出した物には、天幕も鉾もなく露出して居つて、柱の尖には榊などの束ねたのがあるばかり、最目につくのは、此|髯籠《ヒゲコ》であつた。後世漸く本の意《コヽロ》が忘却せられ、更に他の依代を其上に加ふるに到つたのかと思ふ。
然らば其髯籠の本意は如何と言ふと、地祇・精霊或は一旦標山に招ぎ降した天神などこそ、地上に立てた所謂|一本薄《ヒトモトスヽキ》(郷土研究二の四)、さては川戸のさゝら荻にも、榊葉《サカキバ》にも、木綿《ユフ》しでにも、樒《シキミ》の一つ花(一本花とも)の類にも惹かれよつたであらうが、青空のそきへより降り来る神
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