等の「とこひ」にも、八尋鰐や、木の花の様な族霊崇拝(とうてみずむ)の俤が、ちらついて居るのだと思ふ。此方は、かう言ふ事実が、此島での生活が始つてからも、やはり行はれて居て、其に根ざして出て来たもの、と見ても構はぬ。
又、右の二つの想像を、都合よく融合させて、さし障りのない語原説を立てることも出来る。
ともかく、妣が国は、本つ国土《クニツチ》に関する民族一列の※[#「りっしんべん+淌のつくり」、第3水準1−84−54]※[#「りっしんべん+兄」、第3水準1−84−45]から生れ出て、空想化された回顧の感情の的である。母と言ふ名に囚はれては、ねのかたすくに[#「ねのかたすくに」に傍線]なり、わたつみのみや[#「わたつみのみや」に傍線]なりがあり、至り難い国であり、自分たちの住む国の俗の姿をした処と考へて居なかつた事は一つである。此は、妣が国の内容が、一段進んで来た形と見るべきで、語部の物語は、此形ばかりを説いて居る。いなひの命[#「いなひの命」に傍線]と前後して、波の穂を踏んでみけぬの命[#「みけぬの命」に傍線]の渡られた国の名は、常世《トコヨ》と言うた。
過ぎ来た方をふり返る妣《ハヽ》が
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