しかと頼めてし」云々の歌の判詞に、「左、萩にはしかとゝいふに、鹿をこめて、さてその萩だにもすぎむとぞするといはれたる、心[#「心」に白丸傍点]詞《コトバ》たゞならぬにや」などあるのは、皆趣向の意である。
思想の意味に用ゐたのには、古今集の序、「在原業平は、そのこゝろ[#「こゝろ」に白丸傍点]あまりて、ことば足らず」云々とあるもの、
千五百番歌合、百三十六番右、定家の歌の、
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まちわびぬ心づくしの春霞花のいざよふ山の端の空
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を評して、「右、心[#「心」に白丸傍点]こもりて、愚意難[#(シ)][#レ]及[#(ビ)]」云々と、見えて居るもの、
六十四番歌結に、三番子日[#(ノ)]友の右、
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たちまじり小松ひく日はわれならぬ人のちとせもいのられにけり
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とあるのゝ判詞に、「右は、その意[#「意」に白丸傍点]したゝかにいひすゑられて、あまりこちたきまでにぞ聞きなされ侍る」云々、とある類が、其《ソレ》である。

     二「こゝろ」 その二

思想と内容との関係については、前章に於て聊か述べておいたが、
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