いふけれども、水ふくとはいはない。ある人は夜のふかいといふのは漢字の深夜から胚胎せられたものといふけれども、「うば玉の夜のふけゆけば」といふ様な語つきはそんなに直訳的にもきこえない。この夜ふくといふ方をばもとゝしてふかし[#「ふかし」に傍線]をとく場合には極簡略に説明する事が出来る。けれどもさうばかりはいふことが出来ない。水のふかい事をばふく[#「ふく」に傍線]といふ様にいうた古動詞があつたらうとおもふけれども、今は断定することはできない。(つけていふ、ふく・む[#「ふく・む」に傍線]といふ語はこのふく[#「ふく」に傍線]にあるひは関係がありはすまいか。河内の旧讃良郡に深野とかいてふこ〔<ふく〕の[#「ふこ〔<ふく〕の」に傍線]とよむ所がある。この辺は川水のために、古くは沼地であつたので、この地名がその水とか泥とかのふかゝつたことをあらはしてをるのは勿論である。けれどもかういふことは音韻の転訛といふことによりてつぶされるから、さう/\ふかいりはすまい。)
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近《チカ》は、つ・く[#「つ・く」に傍線]から出たものらしい。近・つく[#「近・つく」に傍線]、つき/\・
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