。
優《ヤサ》といふ語は、しく活形容詞の語根でありながら、体言的なのがめづらしいので、この優は勿論やす[#「やす」に傍線]といふ下二段の動詞のあ[#「あ」に傍線]母音をふくんだ形をとつたもので、四段動詞が諸種の動詞の根源であるといふ説がなり立つとすれば将然法というても差支はなからう。(これについては卑見もあるけれど、論が多端にわたるのをさけて後にいふことにする。)やさ男やさ形《ガタ》というても、まだ全くはやす[#「やす」に傍線]といふ語の意を去りかねてゐるのはおもしろい。
次に、浅《アサ》は動詞のあす[#「あす」に傍線]といふ語の将然法とも見るべきあ[#「あ」に傍線]母音をとつた形で、河があさい[#「あさい」に傍線]とか水が浅い[#「浅い」に傍線]とかいふのは、水のあせるといふ思想をばふくんでゐるので、山が浅いとか心があさいとかいふのは水が浅いといふことから、類を推して用ゐたのにすぎないのである。
深《フカ》といふ語については水が深いといふのが元か、夜が深いといふのがもとか、容易に断定することは出来ないが、何れにしてもふく[#「ふく」に傍線]といふ語であるにちがひない。今では夜ふくとは
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