は、熊野へ行つたとき、或は伊勢へ参つたとき、淡路へ行つたときに、拾うて来た石といふ事になつて居るが、此は、巫女の類が、従来あつた石成長の話を、諸国に持つて歩いた印象が、残つたのだと見られる。
私は、恐らく其前に、石其ものがあちこち移動をし、歩くものだといふ話が、必出来て居たのだと思ふ。それがさうした話に、不審を懐く時代になつて、次の携帯して歩く人の話が出来たのではなかつたらうか。
石こづみの風習
此は、石の中にたま[#「たま」に傍線]が這入る、と考へた事から生じた、一つの風習と考へられるが、石の中に人をつみ込む風習が、古く日本にあつた様だ。男子が若者になる為には、成年戒を受けねばならなかつた。彼等は、先達に伴はれて山に登り、或期間、山籠りをして来るのであるが、其間に、此風習が行はれた様だ。修験道の行者仲間には、かなり後々まで、此風習が残つて居た様で、謡曲の谷行《タニカウ》を、あゝした読み方をするのにも、何か訣があるのだと思はれる。彼等の仲間では、死んだものがあると、谷に落して、石をふりかける。悪い事をした者は、石こづみ[#「こづみ」に傍点]にする。こづむ[#「こづむ」に傍
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