神人の墓と凡人の墓とを一緒にすると、祟りがあると言ふ。紀に見えた神功皇后の話も此と一つである。
久高・津堅二島は、今尚神の島と自称してゐる土地である。学校あり、区長がゐても、事実上島の方針は、のろ[#「のろ」に傍線]たちの意嚮によつてゐる形がある。
神託をきく女君の、酋長であつたのが、進んで妹なる女君の託言によつて、兄なる酋長が、政を行うて行つた時代を、其儘に伝へた説話が、日・琉共に数が多い。神の子を孕む妹と、其兄との話が、此である。同時に、斎女王を持つ東海の大国にあつた、神と神の妻《メ》なる巫女と、其子なる人間との物語は、琉球の説話にも見る事が出来るのである。
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此短い論文は、柳田国男先生の観察点を、発足地としてゐるものである事を、申し添へて置きます。
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底本:「折口信夫全集 2」中央公論社
   1995(平成7)年3月10日初版発行
初出:「世界聖典外纂」
   1923(大正12)年5月
※底本の題名の下に書かれて居る「大正十二年五月『世界聖典外纂』」はファイル末の「初出」欄に移しました。
※拗音が小書きになっているところは底
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