見えてゐない女といふ事が、根本になつてゐる様である。他の地方では今日それ程、厳重な儀式を経なくなつてゐる。
現在の久高《クダカ》のろ[#「のろ」に傍線]は大正十年の春、前代の久高《クダカ》のろ[#「のろ」に傍線]の子の西銘《ニシメ》氏の妻であつたのが、嫁から姑の後をついだのであつた。それまでは、矢張りたむつ神[#「たむつ神」に傍線]として神人の一人であつた。此嫁のろ[#「嫁のろ」に傍線]の制度は、久高島では初めてゞあるが、本島では早くから行うてゐた処もある。それは、のろ[#「のろ」に傍線]役地を、娘のろ[#「娘のろ」に傍線]であると、其儘持つて嫁入りするといふ虞《おそ》れがあるからである。

     九 祖先の扱ひ方の問題

七世生神は、人が死後七代経てば、其死人は神となると言ふことである。其が、父神(ゐきい神)母神(おめない神)の位に分れる。つまり、一番新しい家で言へば、其家には神がない。此を新宗家《シンムウト》と言ふ。それより古い家を、中むうと[#「中むうと」に傍線]と言ひ、其中、宗家の宗家を、大宗家《ウフムウト》と言ふ。即、八重山では、新建物に火の神を祀る。時によれば父・母二神
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