祭《サヘノカミマツリ》・厄落《ヤクオト》しなどは、何の日に行うてもよい訣である。
竹を裂いて屋根へ上げる風俗は、自然木の枝を以て、髯籠の髯を模したことを暗示してゐる。先に述べた葬式の花籠は招魂の意のもので、同時にそれが魔除けの用意をも込めてゐるものである。神の依代は一転化すれば、神の在処を示す事になる。邪神は其に怖ぢて、寄つて来ないのである。死体をねらふものは沢山ある。虚空から舞ひ下つて掴み去る火車《クワシヤ》・地上に在つて坏土《ハウド》を発く狼を脅す髯籠の用は、日の形代《カタシロ》たる威力を借るといふ信仰に根ざしてゐるのである。
花籠《ハナカゴ》が一転して、髯が誇張せられた上に、目籠が忘れられると花傘となる。
五 田楽と盆踊りと
出雲の国神門郡須佐神社では、八月十五日に切明《キリアケ》の神事といふ事を行ふ。其時には長い竿の先に、裂いた竹を放射して、其に御祖師花風の紙花をつけたものを氏子七郷から一つ宛出すさうであるが、其儀式は、竿持ちが中に立つて、花笠を被つた踊り手が其周囲を廻るさうである。此は岩戸神楽と同様、髯籠《ヒゲコ》だけでは不安心だといふので、神を誘《オビ》く為に
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