よる称号を与へられたのも、此為であつた。君以外に、信仰上に、最高執務者を設けたのである。女君の配逑なる君のない場合である。
かうした時は多くは、血統最近くて神聖な性格を具へた男子が択ばれて、政務を、宰《ミコトモ》つ。此は、ひつぎの・みこ[#「ひつぎの・みこ」に傍線]と言はれた方々である。通常臣下のみこともち[#「みこともち」に傍線]と区別する為に、略称したみこと[#「みこと」に傍線]を名の末につける。古代から、皇子の中、みこと[#「みこと」に傍線]を以て呼ばれる人と、さうでないのとあるのは、男君・女君に拘らず、最上のみこともち[#「みこともち」に傍線]なる皇子・王だけにつけてゐる。其みこと[#「みこと」に傍線]名が、次第に限られて、執政或は摂政としての皇子だけにつく様になるのが、飛鳥朝の傾向であつた。さうして遂に、一人のみこの・みこと[#「みこの・みこと」に傍線]――ひつぎの・みこ[#「ひつぎの・みこ」に傍線]は数人ある――が、摂政皇太子の義となつた。日並知皇子尊《ヒナメシノミコノミコト》・高市皇子尊《タケチノミコノミコト》などの尊号の、万葉に見える次第である。
女君
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