よらず兆しで顕れる。うけひ[#「うけひ」に傍線]の形である。若しうたへ[#「うたへ」に傍線]の詞なる歌に、過ちや偽りのあつた時は反自然・非現実的な現象が、兆しとして目前に現れよ。かう言つた表現をとつた歌が、相聞の歌の中に違うた領域を開いて来た。此うたへ[#「うたへ」に傍線]から出た民間のうた[#「うた」に傍線]が此までの相聞唱和の内容のない、うはついた歌の中に、多少の誠実味を開いて来た。
宮廷のうた[#「うた」に傍線]と称するものゝ外に、かうしたうたへ[#「うたへ」に傍線]の詞句をうた[#「うた」に傍線]と言ふ様になり、相聞或は恋愛歌が、民間のうた[#「うた」に傍線]の本体と考へられる事になつた。さうして其傾向と勢を一つにしたのは、短歌様式の流行であつた。恐らく、藤原の都から奈良京へかけてが、短歌の真に独立した時代と思はれる。かうした短歌全盛の気運は都よりも、寧、地方から動いて来たものと思はれる。
六 東歌
東歌は、奈良朝時代だけのものでも、万葉集限りのものでもなかつた。古今集にも見え、更に降つて平安中期以後にも行はれた。東遊の詞曲及び、風俗歌が其である。此三種の東歌は時
前へ
次へ
全67ページ中18ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング