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叙事詩の流れの中に、一つ変つた流れがある。其は、人の死んだ時に、読み上げる詞である。此を「誄詞《シヌビゴト》」と言ふ。此は、寿詞《ヨゴト》の分れで、叙事詩の変つたものである。昔の人は、貴族が死ぬと、一年位、従者が其墓について居る。此従者の歌ふ歌が、誄詞《シヌビゴト》から分れて来て、挽歌となつて来る。挽歌も、宮廷に於ては、宮廷詩人が代作する事になつて居る。譬へば人麻呂自身の歌として考へると、解釈のつかないやうなものが多い。
つまり、かう言ふ傾向から、日本人の歌に、譬喩が生れて来る。全くでたらめ[#「でたらめ」に傍線]に、そこにある物を捉へて詠む、と言ふ処から「脣《クチ》ひゞく」の様な形が、出来て来るのである。其中に、少しはつきり[#「はつきり」に傍点]したものと、さうでなく、譬喩と主題とが絡み合つて、進んだ意味の象徴詩と似た形をとつて、象徴的の気分を現す形がある。日本の譬喩の歌は大体、此傾向から発達して来るのである。まだ、説明せねばならぬ事が多いけれども、説明を他の方面に移す事にする。
同じ神が物を言ふ託宣の形にも、神が独りで喋つて居ると、たよりない所から、神と精霊との問答になる。神
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