易いと考へた。国語で出来た新古の詞章と、昔からのものと信ぜられた楽器とで、奏するものでなくてはならなかつた。其大歌はどうして出来たものか。此には成り立ちの新古と、其性質とから、大体四つの種類に分れる。
語部の物語の中の抒情部分、言ひ換へれば、叙事の中に挿んだある人物が、ある場合に作つたものと語り伝へられた歌が、物語から独立して、宮廷詩として用ゐられるもの。記・紀に、何振・何曲・何歌などの名で伝つて居る。
次には、恒例に使ひ慣れて居る大歌では間に合はぬ場合を埋める新作が出来て来た。普遍式なものよりも、特殊風な感情を表さねばならぬ臨時の場合に、群衆(時としては一人)の代りに、謳はれるものとしての詞章が綴られねばならぬ。初めは、謳ふ人の即興であつたものを、群衆が唱和する所から、多くは群衆の感情を代表する事になり、作者も亦、専門化した傾きが出来る。さうして、今日の歴史には、記載を欠いて居るが、宮廷詩人とも言ふべき職業詩人が出て来たのである。よし純粋に、職業化はして居なくとも、官人の中、新作の大歌を要する場合に、極つて製作を命ぜられる人が、飛鳥時代以後には、もう見え出したと思はれる。其作物は、群
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