つたり、角だつたりするものもあります。之を一つの紐に通しておくのが、古語で言ふみすまるのたま[#「みすまるのたま」に傍点]です。だから、考古学の方で、玉の歴史を調べる前に、どうしても霊魂の貯蔵所としての玉といふ事を考へてみなければ訣らぬものが、装身具の玉になつた後にもあるのです。古代には、単なる装飾とは考へてゐず、霊的な力を自由に発動させる場合があつたに違ひないのです。併しそれは、非常に神秘的な機会だから、文字に記される事が少かつたのです。
それから又、古事記・日本紀や万葉集には、玉が触れ合ふ音に対する、古人の微妙な感覚が示されています。我々なら何でもない音だけれど、昔の人は、玉を通して霊魂の所在を考へてゐるし、たま[#「たま」に傍点]の発動する場合の深い聯想がありますから、その音を非常に美しく神秘なものに感じてゐるのです。それを「瓊音《ヌナト》もゆらに」という風に表現してゐます。みすまるの玉[#「みすまるの玉」に傍点]が音をたてゝ触れ合ふ時、中から霊魂が出て来ると信じてゐたのです。結局、たま[#「たま」に傍点]の窮極の収容場所は、それに適当する人間の肉体なのです。其所へ収まる迄に、一
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