なりと、誰か告げなむ(二二六、丹比真人某)
[#ここで字下げ終わり]
これは、人麻呂の思ひに擬して作つたものと伝へてゐます。枕べに玉をおかずに寝てゐるのでは、旅の死者と言ふ事になるから、「玉を枕におき」といふ風に、条件を具備してゐるやうに言つたのです。具備はしてゐるが、其は海辺の荒床だ。其処で行き仆れて寝てゐることを、誰が彼女に告げたらうか、といふのです。
私らの、そこで行きづまる事は、枕に這入つてゐる霊魂と、人間が生きてゐる上に持つてゐなければならぬ霊魂とは、同じものかどうか、といふ事です。此までは、別のものと考へてゐました。それは、神事を行ふ時、霊的な枕をすると、たま[#「たま」に傍点]が体に這入つて来て、神秘な力を発揮して来ます。だから、その神事の時のたま[#「たま」に傍点]と、平生、身体にあるたま[#「たま」に傍点]とは別だと考へてゐたのです。併し、枕の[#「枕の」に傍点]たまと人間の霊魂とは、深い関係にあるらしい事が、前の歌々を見ると考へられて来ます。さうなると、この点はまだ、私にも疑問として残ることになるのです。
とにかく、かういふ風に、神の霊・人の霊・旅行中の霊魂と、霊
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