が、次第に、事実其ものとして感ぜられて来る。唯万葉人の世の末迄、あきつみかみ[#「あきつみかみ」に傍線]を言ふ時に、古格としては、と[#「と」に白丸傍点]のてにをは[#「てにをは」に傍線]を落さなかつたのは、意義の末、分化しきらなかつた事を示して居るのである。
二
倭成す神は、はつ国|治《シ》る人である。はつくにしろす・すめらみこと[#「はつくにしろす・すめらみこと」に傍線]の用語例に入る人が、ひと方に限らなかつたわけには、実はまだ此迄、明快な説明を聴かしてくれた人がない。舌が思ふまゝに働く時を、待つ間だけの宿題である。
其と一つで、おほくにぬし[#「おほくにぬし」に傍線]だけが、倭成す神でなくて、神々があつたのである。神々の中、日の神を祀る神がはつ国しつた時に、母なる日之妻《ヒルメ》と、教権・政権を兼ね持つ日のみ子[#「日のみ子」に傍線]の信仰は生れた。日のみ子[#「日のみ子」に傍線]は常に、新しく一人づゝ生れ来るものとせられてゐた。日のみ子[#「日のみ子」に傍線]が、血筋の感情をもつて、系統立てられると、日つぎのみ子[#「日つぎのみ子」に傍線]と云ふ言葉が出来る。つぎ
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