意であつた。さうすると餓死など言ふ宛て字が、相当の値うちを持つて来る様に思はれる。
○てんごお[#「てんごお」に傍線]・てんご[#「てんご」に傍線]・てご[#「てご」に傍線] 浄瑠璃に屡《しばしば》見るてんごお[#「てんごお」に傍線]と言ふ語は、今も京阪に生きてゐる。多くの場合、てんご[#「てんご」に傍線]・てご[#「てご」に傍線]など短くつめられるを常とする。戯れ・いたづら、まじめな態度を欠いた総ての動作を表す語である。転業・手業など言ふ節用集流の宛て字は、おもしろくない。同じ系統の語らしいものに、口ごはい[#「口ごはい」に傍線]と言ふ語がある。思ふ存分人にあらがひ、罵倒することであるが、てんごお[#「てんごお」に傍線]ほどには、書物の上に残されずに、もう亡びかゝつてゐる。此語は、馬などにも言ふ口強《クチゴハ》と言ふ語の、謂はゞ、連体法のくちごはい[#「くちごはい」に傍線]が、くちごはい[#「くちごはい」に傍線]事など言ふ接続を忘れて、な[#「な」に傍線](<なる)を落す上方修飾語の常習と誤認して、名詞と思うたのである。「親に向うて口ごおはい。罰があたるぞ」或は「口ごおはいな[#「な
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