もなくなつた。軍人が身に換へて大事にする今の軍旗と言ふ物も、存外、信仰とは縁の離れた合理的な倫理観の対象となつてゐる様子である。併しながら、かく明治の代に、新な習合をした西洋の旗にも、実は長い信仰の連続はあつた様である。
此方面の研究は、南方先生の助力を仰がねば、容易に結論は得られ相でないが、西洋の旗幡類を大別すれば、すたんだぁど[#「すたんだぁど」に傍線]と、ふらっぐ[#「ふらっぐ」に傍線]と、並びに其中間を行く物との三つがある様に見える。而も本は、一つのすたんだぁど[#「すたんだぁど」に傍線]に帰着し相である。八尋桙根などをすたんだぁど[#「すたんだぁど」に傍線]に比べて見ると、幾分の似よりは見える。唯彼に在つては、異物崇拝の対象なる族霊(とうてむ)の像を柄《エ》頭につけるが、桙の方には其がない。尤、後世のまとい[#「まとい」に傍線]或は馬じるし[#「馬じるし」に傍線]・自身《ジシン》――又、自分・自身たて物・自身さし物・自分さし物などとも言ふ。御指物揃・馬じるし[#「馬じるし」に傍線]等――など言ふ類には、とうてむ[#「とうてむ」に傍線]から変つた物ではないかと思はれるのもある。
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