荻」に傍線]と云ふさし物(大阪攻め絵巻・弘前軍符)である。此は、普通に撓《シナヒ》と言はれるところの、袋乳《フクロヂ》の小幟風な旗の長く延びて末に尖りを持つた物であるが、神事のよりまし[#「よりまし」に傍線]がさした一つ物・一本薄(郷土研究三の五〇〇等)などゝ縁がありさうである。馬じるし[#「馬じるし」に傍線]・さし物[#「さし物」に傍線]が、神事に交渉の深いことは、笠鋒から筋を引いた物が、諸家に多く行はれてゐる事でも知れる。
有馬直純の指物(島原御陣諸家指物図)に使うた、青杉の酒ほて[#「酒ほて」に傍線]と言ふ物は、※[#「穴/巾」、第3水準1−84−10]《サカバヤシ》の一種と思はれるが、ほて[#「ほて」に傍線]とぼんでん[#「ぼんでん」に傍線](郷土研究三の三九七)と※[#「穴/巾」、第3水準1−84−10]との間の、脈絡を繋いで居るものと言ふ事が出来る。
同じく、植物をだし[#「だし」に傍線]につけた物にばりん[#「ばりん」に傍線]のさし物がある。私は話頭を一転して、まとい[#「まとい」に傍線](円居・纏)の話を聴いて頂く。



底本:「折口信夫全集 2」中央公論社
   1995(平成7)年3月10日初版発行
初出:「土俗と伝説 第一巻第一・二号」
   1918(大正7)年8月、9月
※底本の題名の下に書かれて居る「大正七年八・九月「土俗と伝説」第一巻第一・二号」はファイル末の「初出」欄に移しました。
※底本では「訓点送り仮名」と注記されている文字は本文中に小書き右寄せになっています。
入力:門田裕志
校正:多羅尾伴内
2005年9月10日作成
青空文庫作成ファイル:
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