して、特殊なもので、
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得田価異《ウタテケニ》心いぶせし。ことはかり よくせ。吾が兄子。逢へる時だに(万葉巻十二)
秋と言へば、心ぞいたき。宇多弖家爾《ウタテケニ》、花になぞへて見まく欲りかも(同巻二十)
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後のは、擬古作家なる家持の作だから、個々の語には信用は置けないが、此などは、当時まだ生きてゐた用語例らしく思はれるので、間違ひではなさゝうだ。
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わが宿の毛桃の下に月夜さし 下心吉《シタコヽロヨシ》(苦《(グシ)》)莵楯頃者《ウタテコノゴロ》(同巻十)
三日月のさやかに見えず雲隠り 見まくぞ欲しき。宇多手比日《ウタテコノゴロ》(同巻十一)
何時はなも、恋ひずありとはあらねども、得田直比来《ウタテコノゴロ》恋ひの繁しも(同巻十二)
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あげるもこと/″\しいが、此が今まで知れて居る、万葉集における用例の総計であらう。古今集には、あやまりかも知れないが、異例として、
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花と見て折らむとすれば、女郎花うたゝあるさまの名にこそありけれ(古今巻十九)
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が残
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