いのある人間を書いている訣である。大きく博《ひろ》く又、最人間的な、神と一重の境まで行って引き返すといった人間の悲しさを書いている。作者に、其だけの人間の書ける力が備っていたのである。此だけの大きさを持った人間を書き得た人は、過去の日本の小説家には、他に見当らない。
源氏物語は、男女の恋愛ばかりを扱っているように思われているだろうけれど、我々は此物語から、人間が大きな苦しみに耐え通してゆく姿と、人間として向上してゆく過程を学ばなければならぬ。源氏物語は日本の中世に於ける、日本人の最深い反省を書いた、反省の書だと言うことが出来るのである。
底本:「昭和文学全集 第4巻」小学館
1989(平成元)年4月1日初版第1刷発行
1994(平成5)年9月10日初版第2刷発行
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2007年4月4日作成
青空文庫作成ファイル:
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