元来して[#「して」に傍線]方の役目のやうに見えるが、実は脇方で始めたもので、脇役者がして[#「して」に傍線]をつけた、と見なければならぬ。翁に対する黒尉、即三番叟は、誰が見ても、白式の尉のもどき[#「もどき」に傍線]である事が理会出来る。翁が神歌を謡ひながら舞うた跡を、動作で示すのが三番叟である。三番叟を勤める役者が、狂言方から出るのには、深い意味があつて、動作が巧妙だからだなどゝ言ふ、単純な理由からではない。白式の尉の演ずるものは、歌も舞ひも、頗象徴的のもの――河口慧海氏は、とう/\たらりは西蔵語だと言うて、飜訳されたが、これは恐らく、笛の調子であらう――であつて、その神秘な言動を動作によつて、説明するのであるから、此はどうしてもわき[#「わき」に傍線]方の役者によつて、演じられなければならない。脇方としては、重要な役目である訣だ。
八 翁の副演出
ところで、能楽では更に、此上にそれの説明がつく。能の本随である、神能の所演が其である。翁が入り、三番叟がすむと、殆ど、お茶を呑みに行く間《マ》もない程の間で、神能が始まる。養老・田村・高砂・嵐山など、神仏に関係したものが演
前へ
次へ
全13ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング