らしい。其を見ると、三四月の候に行はれる、鎮花祭の歌と殆、同じものだ。尠くとも、田※[#「にんべん+舞」、第4水準2−3−4]ひは、それの行はれた時期から見ても、五月の田植ゑから出た事が考へられる。それの雅楽化したものだ、と見ていゝ様だ。

     二 田遊びと田楽との関係

田楽は、此後に出て来たので、平安朝の末頃から、田遊びと田楽とが、並行して行はれて居る。此問題では、親友・畏友達の間にも、賛成して貰へない様な点があるのであるが、栄華物語の中に、田遊びの事が出て居る。此も、解釈がいろ/\に岐れて居る。
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またでむがく[#「でむがく」に傍線]といひて、あやしき様なるつゞみ[#「つゞみ」に傍線]、こしにゆひつけて、笛ふき、佐々良といふ物つき、さま/″\の舞ひして、あやしの男ども歌うたひ、ゑひて心地よげにほこりて、十人ばかりあり云々。
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とある。此でむがく[#「でむがく」に傍線]は、鼓の名だとする説がある。尤、鼓にもあつて、其は田つゞみとも言ふが、此場合の文章では、此は鼓の事ではない。「田遊び」に並べて、「また田楽といつて、人員十人ばかりが
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