前で、天狗の吠える式があるらしい。日本の神道では、神の叱りと言ふものが、大切な事になつて居た。古い信仰の印象が、さうした形で残つたのだと思ふ。
田遊びは、初春の行事であつたのが、元の形である。其が、五月に繰り返され、更に七月にも行はれる様になつて、愈盛んになつた。五月田植ゑの時に移し行はれたのは、如何にも、実感に適するからであつた。七月に行はれる様になつたのは、稲の穂の出る時であり、また、不安の伴ふ時期であつたからだと思ふ。要するに初春の行事だつた、春田打ちの延長と見られるのである。



底本:「折口信夫全集 3」中央公論社
   1995(平成7)年4月10日初版発行
底本の親本:「『古代研究』第一部 民俗学篇第二」大岡山書店
   1930(昭和5)年6月20日
初出:「民俗芸術 第二巻第九号」
   1929(昭和4)年9月
※底本の題名の下に書かれている「昭和四年六月二十九日、郷土研究会講演筆記。昭和四年九月「民俗芸術」第二巻第九号」はファイル末の「初出」欄、末尾注記欄に移しました。
※底本では「訓点送り仮名」と注記されている文字は本文中に小書き右寄せになっています。
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2007年5月2日作成
青空文庫作成ファイル:
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