かけ、うらは[#「うらは」に傍線]占と顔色《ウラ》とをかけた姿になつてゐる。まさ[#「まさ」に傍線]・うら[#「うら」に傍線]は占ひの縁語であるとも言へよう。無意識であらうが、今一歩進めば、意識に上るのである。万葉にも、既にある部分までは、縁語を技巧視せぬまでも、喜んだ傾向の歌は見える様に思ふ。段々進むと、別様の道を通つた様に見えるが、縁語・かけ詞は此方面からばかり発達したのである。武蔵野の歌は「……象灼き」まで序歌なので、実際内容には、関係がないが、どうかすれば、武蔵野占法に占うても現れぬ君の名が、まざ/\と……言ふ風にとれる。かう言ふ内容に対する考への変化が段々縁語・かけ詞を発達させて、首尾交錯して剖《わか》つことの出来ないのを特徴とする様な病的な修辞法が出来て来たのである。



底本:「折口信夫全集 1」中央公論社
   1995(平成7)年2月10日初版発行
底本の親本:「『古代研究』第二部 国文学篇」大岡山書店
   1929(昭和4)年4月25日発行
※題名下に「大正十五年一月草稿」の記載あり。
※底本の題名の下に書かれている「大正十五年一月草稿」はファイル末の「注記」欄
前へ 次へ
全16ページ中15ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング