」に傍点]と言ふ風に、なつて来たやうである。併し其は壬生選定に関する附随条件であつた。主要なものは、聖なるみこ[#「みこ」に傍線]は、生れ立ちから、宮廷の人でありながら、他氏の手で養はれて育つと言ふ点である。其養育の任に当る壬生氏に、種々な家が選定せられた。かうして生《オフ》し立てたみこ[#「みこ」に傍線]が、聖格を顕現して、ひつぎのみこ[#「ひつぎのみこ」に傍線]に儲《マ》け備り、ひのみこ[#「ひのみこ」に傍線]に至られることを望む様になるのは、自然の勢ひだが、必しもさうした希望を以て、お育てしてゐるのではなかつた。唯、神を生《オフ》し育てる家々の習俗が、人なるみこ[#「みこ」に傍線]を育《ハグヽ》み申す形を、とる様になつて来たからのことである。さうすることが、古代の民俗《フオクロア》であり、又さうすることによつて、其家の家格を外に示すことになつてゐたのである。時代を経て後、「むこ」として、ゆくりなく一家庭に、貴人の出現を迎へる形が分化して来た。之を迎へて子の如く、子より愛し、更に其穿つた沓《クツ》をとつて懐にするまでの民俗の残つたのも、壬生氏選定の古風が行はれずなつて後、世間の婿取
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