いで考へられたことは、択ばれた、聖なる母胎に寓らねばならぬことであつた。尊い数人の女性の御腹に、各御子があつた時には、之を選択するに、其生れ立ちの奇瑞と、成長後の神の恩寵と、自ら持つ霊威力とを、第一の条件とした。さうして、其に叶うた数人――概して二三人を「ひつぎのみこ」として、神聖な待遇と其に適した生活様式をおさせ申した。さうして、多くの場合、其ひつぎのみこ[#「ひつぎのみこ」に傍線]の中から、ひのみこ[#「ひのみこ」に傍線]――即、天子をお立て申すことになつて居た。だから、ひつぎのみこ[#「ひつぎのみこ」に傍線]に太子の字を宛てることはあつても、必しも後の皇太子には当らぬのである。其ひつぎのみこ[#「ひつぎのみこ」に傍線]に択ばれずに居られたみこ[#「みこ」に傍線]たちも、元よりその家庭生活の形は、前に言つた通りで、唯、ひつぎのみこ[#「ひつぎのみこ」に傍線]、ひのみこ[#「ひのみこ」に傍線]特有の生活様式は避けて居たが、日常生活は、多くは同様であつた。ひつぎのみこ[#「ひつぎのみこ」に傍線]も、みこ[#「みこ」に傍線]の時期は、大凡《おほよそ》同じ為向けを受けて育たれたものらしいか
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