はじめて表現せられ、神之を神子に授けて、其威力を以て、地上に詔命を及さうとしたものと考へるやうになつたのである。即、「天《アマ》つ詔座《ノリト》」と名づける神事の一様式を、天上にもあることを想像して居たのである。さう言ふのりとごと[#「のりとごと」に傍点]の性質上、荘厳な讃辞を加へるのが常である。天上の詔座における詞章にして――其は最壮大な詔座の詞章と云ふ表現を持つた「あまつのりとの―ふとのりとごと」(天津詔刀乃太詔刀言)なる讃《ホ》め語が行はれた訣である。だから「のりと」を原形と信じて、「のりとごと」をその重言とする考へは、皆「のりと」のと[#「と」に傍点]に言《コト》の意義を推測してゐるので、当つてはゐないのである。
吾々の今考へねばならぬことは、その「天つのりと」が後世まで伝誦せられた、どの詞章に当つてゐるかと言ふことである。其と同時に、天つのりと[#「天つのりと」に傍点]は姑く措いて、現存或は、亡失したのりと[#「のりと」に傍点]の中、大体どう言ふ種類のものが、古風のものか、と言ふ問題がある。
其に先《さきだ》つて言はねばならぬことは、「祝詞」又は略して「祝」の字面を以て、のり
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