うした宗教歴史の並行して行はれる様になつた最大の条件は、氏々の家が皆、神人の大きなものであつたといふことである。
壬生の氏々は、神人家で神を育んだ旧伝承を、新しい民俗として現実生活の上に実現した。さうして、神の子と感じるに最適した、最貴の家庭のみこ[#「みこ」に傍線]を迎へて、はぐゝみ育てた。
此形のまゝに進んで行つたとしたら、みこ[#「みこ」に傍線]のひつぎのみこ[#「ひつぎのみこ」に傍線]となり、ひのみこ[#「ひのみこ」に傍線]となられるに従うて、壬生として奉仕した氏の長上は、天子を輔佐する位置まで行つたであらうが、民俗と歴史とは、――その現実が、信仰に背信《コロビ》を打つたやうに、明らかに豹変した形を示してゐる。
時代毎に替るはずの壬生氏が、一々政権の首班或は其に近い位置に居るといふことがなくなつて、政柄をとる家筋は、大体に固定する傾きを見せて来た。
併し其にも繋らず、常に執柄者が、ひのみこ[#「ひのみこ」に傍線]にとつた行き方は、一つ姿を持つてゐるのであつた。其は、我々が想像してゐる形ではなかつた。どの時代を見ても、布教者が若き神をはぐゝみ申したのと、同じ態度をとつて居る。津田
前へ
次へ
全63ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング