歌の形に落ちついたと見られる。こゝに抒情詩としての内容の扱ひ方即、発想法における抒情技術も現れて来た訣である。
日本文学の発生は、仮りにこゝに、とぢめ[#「とぢめ」に傍線]を作ることが出来る。類型的であつても、稍個性的な事情と、環境とを条件とした表現法が、発明せられて来たのである。さうして、其時代は何時かと言ふに、我々が普通、日本有史時代と考へてゐる大倭宮廷の発祥時よりも、或はもつと古く考へて、世間では、既に純文学の現れた事を予期し勝ちな時代においてすら、尚徐々と、文学及び文学的なものに向つて行つて居た、と言はれるのである。つまり、其だけ地方々々によつて、事情が違ふのである。大倭宮廷の歴史を中心にして考へても、我々は、奈良朝以前を一括して、発生時代と見てもよいと思ふ。



底本:「折口信夫全集 4」中央公論社
   1995(平成7)年5月10日初版発行
初出:「日本文学講座 第一巻」改造社
   1933(昭和8)年10月
※底本の題名の下に書かれている「昭和八年十月、改造社「日本文学講座」第一巻」はファイル末の「初出」欄に移しました
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2009年8
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