は、早くよごと[#「よごと」に傍線]と言ふ語の用語例が訣らなくなつて了ひ、後世学者は、祝詞の古いものと思ふ様にさへなつて居る。其といふのも、のりと[#「のりと」に傍線]なる名称の範囲が拡がつて、古くは、よごと[#「よごと」に傍線]の領分にあつたものまでも、のりと[#「のりと」に傍線]――祝詞――なる用語例に入れて言ひ表す様になつた為だ。
邑落にとつて、最古く尊重すべき詞章――其を唱へる者自身、同時に神であると信ぜられた所の――が、此様に分化して、のりと[#「のりと」に傍線]とよごと[#「よごと」に傍線]の二つとなつた。さうして、国家意識が進むと共に、宮廷に誓ひ奉らねばならぬ資格の国、及び人が殖えて来る。其詞章の根柢をなすものは、即、主神に対して、精霊の奏した詞章の形式を襲用する形をとつて居るのである。さうして其が又、次第々々に無限とも言へるばかりに増加して行つたのだ。此に対して、のりと[#「のりと」に傍線]を唱へる人格は、主神の資格においてし給ふ、宮廷の主上が当られる事になつて居たのだ。
正確に言へば、宮廷において宣下せられ、或は侍臣の口によつて、諸方に伝達――みこともつ[#「みことも
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