らぬ古い事情は、職団の移動・定住の状態である。職の神聖なる長者は、宮廷式に言へば、伴造《トモノミヤツコ》であつたらしいが、其宮廷直属の、由来久しいものと信ぜられたのは、特に伴緒と称してゐたらしい。伴造の所管にある民は、伴部であるが、其団体が常に漂遊して、諸国に散在して居るのと、各処に定居して居たものとがあつた。小氏が村を作るのは、普通形式である。職団部民の方は、其に対して、さすらひ歩くのが、古い形らしく、其伴造になるものが、京に住む様になつて行つたものと思はれる。併し、其とてもわりあひ、後代に纏つた二つの様式かも知れない。まづ此様式から言へば、後世の新撰姓氏録の記載例なども、其固定した俤を伝へるものと見てよい。だから、事情によつては、可なり早く、諸処に定住した例もある。其は、後に言ふ。
これを、宮廷の上の習儀にうつして見ても、同様の事があつた。即、後世、荘園の出て来る元の形は、こゝにあつたのである。御名代部《ミナシロベ》・御子代部《ミコシロベ》など称するものは、宮廷において、新村落を分立した場合の称号であつた。而も詳しく言へば、必しも土地に固定した民団ばかりでなく、流離する職団を意味す
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