かつたらしい。此が「枕詞」「序歌」なり、或は神聖なる「神・人の称号」なりに固定する外に、この諺の起原と称する第二次の物語を発生させたりした。さうして、この語を周る短篇は、笑話の前型とさへなつてゐる。
宣詞が、対照的に寿詞を派生し、寿詞が叙事詩を分化し、叙事詩と相影響することによつて、宣詞から諺が、叙事詩自身からは、歌の発生して来た径路は、此で説けたことにして貰ふ。

      叙事詩

叙事詩の成立が、邑落或は国家生活の間に、次第に新しく歴史観を生じて来る。村にとつては、叙事詩の存在が、大切な条件となつて来なければならない。其なら、叙事詩の初頭の部分は、すべて村の開闢と考へられる時から伝つたもの、と信じられてゐたかと言ふと、さうばかりでもない。信仰の上では、其考への基礎に立つて居たのである。やはり、後代村の巫覡の感得によつて唱へ伝へられたものゝ、却て多いことは察せられるのだ。だが同時に、考へなければならないのは、新しい部落の建設と共に出来て来る、第二次的の叙事詩である。
村の成立の基礎には、旧村の分岐する事実と、統制ある職業団体――古代の職業は、すべて神の為のものとして、聖なる職団を
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