もあり、又其様式を完成せずに了つた処もあるらしいが、所謂語部の実際存在した事は疑はれぬ。巫女と男覡の職分が、交錯してゐる場合が多いのだから、処によれば、男を語部の主体と認めた処もある様だが、概して女性が語部の本職を保ち、戸主でもあつた。此が宮廷式なのである。
呪詞を伝承して暗記させてゐる間に、其主君の皇女・皇子たちに呪詞の含むところの言霊《コトダマ》が作用して、呪詞の儘の力を持つ人とならしめるものと考へた。高級巫女或は、神人を作る為の伝承の為事を、下級の巫女がもつ訣である。
巫女・男覡に限らず、目上の人を教育する力は、信仰上ないものと考へ、唯《ただ》其伝承詞章の威力をうつさうとしたのだ。意識なしにした言語教育であつた。第一には、呪詞に籠る神の魂を受け取り、第二には、叙事詩として、其詞の中に潜んでゐる男性・女性の優れた人の生活が、自分の身にのり移つて来るものと考へ、第三には、自ら知識が其によつて生ずる。かういふ風に、次第に教育的意義を持つて来る訣である。其と共に宮廷に仕へる諸家・諸国出の巫女が、其家・国に伝へた呪法と呪詞・叙事詩を奏する。此が宮廷の文学を発達させる原因になつた。即、諸氏の
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