に心付く筈である。家常茶飯として、特に伝へる必要を感じなかつた古代生活が、奈良朝以前の記録に漏れて来た理由は、考へ難くない。唯、其が、たま/\平安朝に引継がれて、固定して存してゐた部分の、特殊な取り扱ひを受けねばならぬ程、変つた様式と考へ出されるのだ。其が却つて、近代からは、其時代に始まつた為に、文献に見え出したと考へられてゐる様だ。だが、さうした考へこそ、すべての歴史観に立つ学問から、取り除けられねばならぬものだ。こゝには其一つとして、ものゝふ[#「ものゝふ」に傍線]並びにかんだちめ[#「かんだちめ」に傍線]について説かうと思ふ。
ものゝふ[#「ものゝふ」に傍線]は宮廷並びに公式の祭時に当つて、音楽・舞踊、即、古代の語で云へば、神遊びに属するものに深い関係を持つてゐる。原則として、宮廷武官・六衛府の官人其他が関係する訣である。而も、それらの中の指導者と言ふべきものを、ものゝふし[#「ものゝふし」に傍点]と称へてゐる。同時に此語が、曲節など云ふ意義をもつてゐなかつた事は明らかだ。必、ものゝふ[#「ものゝふ」に傍線]を根幹としてゐる語だと云ふ見当に、誤りがあるまい。王朝中期以後次第に京都
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