の解説――細字の部分[#「細字の部分」は割り注で処理]――は、必しも古い形を説明してはゐない。正確に言へば、此詔詞が最適切に用ゐられる場合は、即位式並びに元旦朝賀の時である。御代の初めの宣言を行はせられた即位式は、古くは大嘗祭と一つ儀礼である。一方、元旦は言ふまでもなく年の初めだ。即、御一代一度の行事が、一年一度の行事と一つだ、と考へられた事を示してゐる。而も、外蕃に対しての関心を持たない時代の詔詞は、大倭根子天皇なる御資格を以て、大儀礼を宣せられたのだ。其で「大倭根子……天皇」と謂つた御諡を持たれた御方々がおありになる訣だ。詔詞の始めに据ゑた御資格が、御生涯を掩ふ御称号となつたのである。
古代日本の生活は、必しもその一番大きな生活様式であるところの、宮廷の様式だけを論じてすますわけにはゆかぬ。各邑落に小さいながらも、同じ様式の生活があつたと見る事が出来る。断つて置かねばならないのは、言ふまでもなく邑落・種族によつては、全く違つた生活様式もあるのだけれども、だん/\上の生活を模倣して来る。此が、われ/\民族の古代生活に於ける、一つの生活原理なのだ。だから、宮廷の生活は、或点まで総ての貴
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