たので、これを飾るのは、それを目あて[#「目あて」に傍点]にしてお客が来られる様に飾つておく訣なのです。普通の宴会だと前から招待して連れてくるから、別に遠くから目あてにくる必要はない。日本の宴会は大昔から行はれてゐました。さうしてその宴会の精神は元は、もつとはつきり[#「はつきり」に傍点]してゐました。昔は神を迎へたのです。さう言ふことは近代の宴会でも察せられますが、昔はずゐぶん変つてゐたのでせう。神が天から降りて来られる時、村里には如何にも目につく様に花がたてられて居り、そこを目じるし[#「目じるし」に傍点]として降りて来られるのです。だから、昔の人は、めい/\の信仰で自分々々の家へ神が来られるものと信じて、目につくやうに花を飾る訣なのです。併し、神によつて供へる花が変ります。花のない常磐木の枝や、薄の穂なども、目につくやうに立てます。場所によると人間の姿をしたものをたてなければならなくなつた処もあります。唐子や仙人、又は、獅子や狛犬の像をたてるといふ風に変つてきます。お月さんの時は昔からきまつて芒をたてる。大体芒だけでよいわけです。併し、その時に、昔程芒の中に銀紙ではつた月の形を出
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