さんのまつりのことです。その花をどうするかといひますと、あれは今日西洋式の宴会を開きますと、色々な花を飾る。さういふ風に、日本でも昔から花を飾つてゐます。その証拠には婚礼の時、以前には何処でも行つたことですが、今は特に古風な婚礼の場合にしか見かけなくなりました。座敷に島台を飾つておきます。高砂の尉と姥の飾りつけをした、この島台は何かと申しますとこれが宴会の花と同じことなのです。島台のことを古くは洲浜《スハマ》と言つてゐます。水の流れてよつてゐる洲のことで、島台の形に何かうね/\した波の寄る砂浜の様子が見えてゐるからかう言ふのでせう。京都の古風なお菓子に「洲浜」といふのがあることは御存じでせう。さういふ川の砂浜の様子をかたどつた台の上に、色々なものを飾つたものです。人形を飾ることも、植物を飾ることもあります。さういふ動物・植物をのせて宴会の席に飾る訣で、江戸時代の中頃までは、正式な宴会の絵を見ると、屋敷の中心に洲浜が飾つてありますし、又、舟遊山の時にも洲浜の据ゑてあるのが描いてあります。普通は草の花木の枝を飾り、場合によると人形を飾ります。
で、つまり、婚礼ばかりでなく、宴会の時にも飾つ
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