短歌様式の発生に絡んだある疑念
折口信夫
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)聊《いささ》か
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)海|都農《ツヌ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
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今の世の学者が、あらゆる現象を、単純から複雑に展開してゆくものときめてかゝる考へ方は、多くの場合まちがつた結論に安住することになつてゐる。文学の場合もさうであつた。
沢村専太郎氏が、ふた昔も前に発表せられた、短歌様式の論(明治四十年頃の新小説)は、それまでの歌論の、ゆきつく処まで、ひき上してゐる。其後、友人武田祐吉も論じ、私も聊《いささ》か述べたことがある。
併、考へれば、私までが、簡単な論理に低回してゐたのであつた。
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あしびきの山より出づる月まつと、人には言ひて妹[#「妹」に傍線]待つ吾を(万葉巻十二)
[#ここで字下げ終わり]
この歌は、おなじ万葉の、
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もゝたらず山田の道を靡《ナミ》く藻の愛《ウツク》し配《ツマ》と語らはず別れし来れば……霊あはゞ君来ます
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